「自分のせいで患者さんに迷惑をかけてしまった。」
「またミスをしてしまうんじゃないか。病棟に行くのが怖い。」
新人のころ、私も患者さんへのミスを経験しました。転倒させてしまったこと、飲水形態を間違ってしまったこと。どちらも今でも忘れられません。
ミスをしたあとの落ち込みは、言葉にできないくらいつらいものです。でも、その経験があったから今の自分がいるとも思っています。
この記事では、私の実体験をもとに「ミスをしたときの立ち直り方」をお伝えします。
※これは個人の経験・見解に基づいています。インシデントの対応は職場のルールに従ってください。
結論:ミスはする。大切なのはその後の行動と気持ちの整理
はっきり言います。新人のうちにミスをしない人はいません。
経験が少ない中で、複雑な臨床現場に立ち向かっているのですから、何かが起きることはある意味で必然です。大切なのはミスをしたかどうかではなく、そのあとどう行動して、どう気持ちを整理するかです。
① ミスをしたら、まずやること
ミスが起きた瞬間、頭が真っ白になることがあります。でも、やるべきことはシンプルです。
※仮定として転倒や誤嚥、嘔吐、意識消失等の緊急を要する場面を想定しています。
すぐに報告する
務めている先によって方法に差はあると思いますが、どこでもおそらく共通なのは誰でもいいです近くの人に応援を要請してください。頭が真っ白になって固まってしまう気持ちはわかりますが、大きな声で誰かを呼ぶ。これだけは絶対に徹底してください。
患者さんの状態を確認する
ここからは新人の内は難しいかもしれませんが対応として頭には入れておいてください。
まずは安全の確保です。二次転倒の防止、嘔吐であれば窒息予防の体位をとる等が優先されます。大切なことは無理に起こそうとしないことです。転倒であれば骨折や頭部外傷等のリスクがあり起こしたことで症状が増悪する可能性もあります。
後は応援に来てくれるまでに意識レベルの確認や呼吸状態、循環動態の確認ができるとより良いです。
分からない内は声掛けに反応があるが、呼吸をしているかを確認して、結果に応じてAED陽性とCPR準備を進めてください。
事実を正確に伝える
何が起きたか、いつ、どんな状況だったかを正確に伝えます。自分を守るために事実を曲げることは絶対にしないでください。正直に伝えることが、その後の信頼につながります。
② 気持ちの立ち直り方
対応が落ち着いたあと、自分の気持ちをどう整理するか。これが一番難しいところです。
時間が解決することを信じる
あまり大きな声では言いにくいですが、正直に言うと、私が一番助けられたのは「時間」でした。ミスの直後はどれだけ考えても答えが出ず、ただつらいだけでした。でも時間が経つにつれ、少しずつ気持ちが落ち着いてきました。今すぐ完全に立ち直ろうとしなくていい。時間が経てば、必ず楽になります。
職場外の人に話す
私は大学時代の理学療法科の友人に話しました。同じ職種の友人は、現場のリアルを分かった上で話を聞いてくれる。「自分だけじゃないんだ」と思えるだけで、気持ちが少し楽になりました。職場の外に話せる人がいることは、本当に大切です。
③ 二度と繰り返さないための対策を考える
ここが一番の肝です。
「もう同じことはしない」という気持ちだけでは不十分です。具体的な対策を考えることが大切です。
私が転倒インシデントを起こした際は、介入中の休憩時に少し目を離した際におひとりで片脚立ち練習を行われ、ふらついた時に対応が遅れ支えきれなかったからでした。
そこから立てた具体的な対策としては、どれだけ自立度が高くても介入中は、目を離すなら手を、手を離すなら目を離さないということを徹底することでした。
飲水形態のミスは、経鼻胃管を挿入されており、覚醒度にむらがあるが出来る能力はすごく高い患者さんでした。介入前に経鼻胃管を自己抜去されており、Nsさんは次の注入前に再挿管する予定だったとのことです。当日担当として初めての介入で「お茶が飲みたい」と訴えがあり、経鼻栄養中という情報を持っていなかったので、飲水形態のファイルを確認し特記がなかったため普通茶を促したところムセてしまい周囲の人の指摘で気付いた例でした。
具体的な対策としては、当日担当の方は事前にカルテで飲水形態を絶対に確認する。飲水形態ファイルを確認して少しでも疑問があればNsや担当STに形態を確認するということを徹底しています。
ミスから学んだ対策は、自分だけでなく病棟全体の安全につながることがあります。落ち込むだけで終わらず、「次にどうするか」を考えることが、ミスを意味のある経験に変えます。
④ ミスは個人だけの問題じゃないこともある
ミスをすると「自分がダメだから」と自分を責めがちです。私の起こした事例は言い訳する余地なく私が悪いです。ですが対策の一環として、システムや環境の問題が背景にあることに気づくことも少なくありません。
私の経鼻栄養のインシデントも、飲水形態の管理ファイルに経鼻栄養患者さんは記載しないという抜け穴があったという環境的な問題がありました。他にも自己抜管したことが周知されていなかったということもありました。もちろん確認が不十分だった自分に非があります。でも、誰でも同じ状況に置かれたら同じミスをし得た、という側面もありました。
自分を責めすぎることなく、「なぜこのミスが起きたのか」を冷静に分析することが大切です。個人の問題なのか、環境・システムの問題なのかを切り分けることで、本当に必要な対策が見えてきます。
まとめ:ミスを経験した分だけ、いいセラピストになれる
| 場面 | やること |
|---|---|
| ミス直後 | すぐ報告・患者状態確認・事実を正確に伝える |
| 気持ちの整理 | 時間に任せる・職場外の人に話す |
| 再発防止 | 具体的な対策を考える・システム問題も視野に |
ミスをしたことのないセラピストはいません。先輩も、ベテランも、みんな何かを経験してきています。大切なのは、そのミスから何を学んで、どう行動を変えるかです。
ミスをしたあなたは、それだけ真剣に患者さんと向き合っている証拠でもあります。自分を責めすぎず、一歩ずつ前に進んでください。
今日からできる1つのこと:今日のインシデントや気になった場面を1つ振り返り、「なぜ起きたか」を一言書き出してみてください。






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